2007年5月19日土曜日

研究の動機付けとなった現象は?

医薬品の用量反応試験とは、研究対象となっている医薬品の数種類の用量の比較により、用量と医薬品の有効性の関連性(「用量反応関係」)を検討することを目的とした臨床試験である。用量反応試験では様々な試験デザインが適用されるが、本研究では固定された用量の投与群を並行群間試験において比較する場合を扱う。

用量反応関係として最も単純なものは単調増加性あるいは単調減少性であり、このような関連性を検出するための統計的検定は傾向性検定と呼ばれる。応答変数の形式に応じて様々な傾向性検定の手法が提案されている。

ある臨床的事象の発現までの時間を応答変数とする場合、傾向性検定としてはTarone検定がよく知られている。この手法は、臨床的事象発現のハザード関数の線形対比に対する検定手法であり、Cox回帰モデルから導出することができる。

一方、以下のような状況を考える。

  • 慢性的な動脈閉塞に起因する下肢切断実施までの時間を有効性の応答変数とする。
  • 事象の追跡が長期にわたるため、途中で追跡の打切りが伴うが、重篤な疾患であるため、被験者の死亡による打切りの可能性がある。
  • 医薬品の安全性評価の一環として、下肢切断実施に関係なく、一定期間の追跡を実施する。従って、「臨床的事象の発現後に死亡」というパターンが想定される。
このような場合、現時点で考えられる有効性の解析は以下のとおりである。

  1. 下肢切断実施までの時間に対してTarone検定を適用し、打切りの理由は考慮しない。
  2. 下肢切断実施・死亡いずれかの発現までの時間に対してTarone検定を適用する。
これらの解析は問題点を含んでいる。1.については、死亡が下肢切断と独立な事象であると考えている点である。動脈疾患が背景にあることを考慮すると、全ての死亡を下肢切断と独立と考えるのは問題がある。